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「枕草子」は清少納言の祈り? 冲方丁著「はなとゆめ」を読んで

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NHK大河ドラマ「光る君へ」では、主に道長、藤式部(紫式部)、道長の娘の彰子サイドの視点からの物語が描かれていました。

 

一方で、時の帝(=一条帝)を軸とした反対側のサイドについての視点も、無性に知りたいと思うようになりました。

SideAからSideBへチェンジです。

 

そこで今回は、関白道隆、清少納言、道隆の娘の定子サイドの視点から描かれている物語、

冲方丁(うぶかた とう)著「はなとゆめ」

を読んでみました。

 

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ハードカバーの本で読んでみたのですが、カバーをめくってみたら、ここも雅でした☆

 

感想

 

1.冲方丁さんの他の歴史小説「天地明察」や「光圀伝」を過去に読んでいて思ったのですが、本に書きたいと思う方の資料を冲方さんはとても丁寧に読み込んでいます。

 

そしてまるでその方の一生を「実際に見てきたかのように」作品に再現していくので、途中で読むことを中断することが難しく、いつもわたしは睡眠不足に陥ります。

そして今回もやはり睡眠不足になりながらの完読となりました。

 

本書「はなとゆめ」は、そのすべてが宮中を去ったあとの清少納言の「回想」というかたちで書かれています。

 

最初は、男性である冲方さんが、女性である清少納言の心のひだをどう描けるのかしら、という一抹の不安があったのですが、途中からはそんなことなどすっかり忘れていました。

 

2.清少納言が、あのキラキラしたエッセイ風の「枕草子」を書いたのは、お仕えする中宮定子も清少納言自身も実は一番苦しく大変な時だった・・。

ここに深い意味がある・・。

 

昔、学生時代に習った古典(今は、ほんのり覚えている程度です)。

その時は、清少納言は中宮定子の側にお仕えしていたのだから、恵まれた環境の中で例のあの

春は、あけぼの。

から始まる「枕草子」を書き上げたのだと思っていました。

 

当時は高級品だった紙。

なので、紙はたとえば献上品として一部の方しか目にすることの出来ないものでした。

当然、どこにも売ってませんから紙は買えません。

 

そもそも中宮定子の兄、伊周(これちか)が、一条天皇と中宮定子にそれぞれ紙の束を献上したのです。

 

清少納言はその中宮に献上された紙の束を、あなたがこの紙にお書きなさい、と中宮から下賜されたのです。

 

その頃は確かに、

中宮定子、兄の伊周、二人の父である関白道隆、そして一条帝といったロイヤルファミリーは幸せの真っただ中だったかもしれません。

 

ただ、清少納言は、自分のことを認め、才能を見出してくださった「中宮様のためにこそ筆をとろう」、と心に決めたものの、ずっと「何を書いたらよいのだろうか」と逡巡しています。

 

実際に書き始めるのは中宮定子も清少納言もいろいろと不運や不条理なことに見舞われてから。

もっと後のことなのです。

 

わたしの「枕」は、人に感銘を与えるものでも、感動の涙を流させるものでもないのですから。

思わず意表を突かれ、つい笑ってしまうもの。そういうしろものなのです。(p265)

 

みじんも悲しみや影を感じさせず、

たわいもないこと、小さな発見、喜びのみを

「枕」にしたためることで、中宮定子とご一家のきらきらしたご様子を

「瞬間冷凍」する。

そして願わくば千年先の人々にも届けること。

そんな「祈りのようなもの」が「枕草子」に込められていたのではないか、と本書を読んでいて思いました。

 

中宮定子が、ご自身こそが一族全ての繁栄の要である、という重荷を負いつつも、常に凛としているさま。

 

清少納言が感じていた、自分は何者でもない、というコンプレックスの中から、中宮定子と出会って自分を見出していく過程。

 

そして二人の絆。

 

そんなところも細やかに描かれていたと思います。

 

3.それにしても、摂政・関白になるシステム。

そもそもいかがなものでしょう?

 

自分が帝の摂政や関白になろうとしたら、

  • まず女の子をもうける
  • その女の子をやがて帝の妃にする
  • そしてその妃が男子(皇子)を生む

これしかありません。

どこかひとつでもこの条件が欠けていたら達成できないのです。

 

だから有力貴族は(結局は同じ「藤原氏」の中で、になりますが)こぞって娘を入内させ、誰が早く男子(皇子)を生むのか、の争いが必然的に起きてしまうのですね。

 

でも、この条件をクリアするのって、全く人知の及ぶ所ではないことです。

なのに権力を手にするために、こんな条件に頼らなくてはならないシステムが当時まかり通っていたこと。

ここに、帝をめぐる女性たちの人生が翻弄されてしまう、真の要因があったのかと、しみじみ思いました。

 

歴史にIfはない、と言います。

それでもどうしても思ってしまうのです。

もし帝の補佐役として、中国の科挙(かきょ)のような、優秀な人材を試験で登用するシステムが日本でも採用されていたとしたら、どうだったのでしょう・・。

そんなことをつい想像してしまいました。

 

冲方丁さんはこんな方です(本書より)

1977年岐阜県生まれ。

96年、大学在学中に「黒い季節」で第1回スニーカー大賞金賞を受賞しデビュー。

2003年「マルドゥック・スクランブル」で第24回日本SF大賞を受賞。

09年、初の歴史小説「天地明察」を刊行、同書は第31回吉川英治文学新人賞、第7回本屋大賞、第7回北東文芸賞、第4回舟橋聖一文学賞、2011大学読書人大賞を受賞した。

12年「光圀伝」で第3回山田風太郎賞を受賞。

 

本書目次

第一章 小白川

第二章 清涼殿

第三章 草の庵

第四章 職の御曹司

参考文献

 

本書を読んでから

・・「枕草子 ビギナーズ・クラシックス 日本の古典」(角川ソフィア文庫)をうっかり購入してしまいました。

どうしましょう?

 

現代語訳の「源氏物語」や、お世話になっている他のはてなブロガーさんたちからご紹介いただいた本もあるのに・・。

お正月休みで読めるかしら(*_*;

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