
※当ブログではアフィリエイト広告を利用しています
2026年の大河ドラマ「豊臣兄弟」を観ています。
今いちばん興味のある登場人物が、主役の羽柴秀吉・秀長兄弟のお二人と明智光秀を除くと、それは荒木村重その人になります。
大河ドラマでは荒木村重役をトータス松本さんが、関西弁を駆使して演じてらっしゃいました。
なんとも斬新で強烈なインパクトでした。
そのため、実際にもこんな人だったかも、と思えるほどリアリティー感のある荒木村重像がわたしの脳内にまんまと出来上がってしまいました。
天正7年(1579年)9月2日の夜、信長に対する約1年におよぶ籠城戦の最中に、わずか5~6人の供回りだけを連れて密かに有岡城を脱出した村重。
息子の村次のいる尼崎城、さらに花隈城に移ります。
一方、有岡城に残った村重の家族・一族、家臣の多くは信長により、後に京都の六条河原等で処刑をされるのでした。
信長サイドの冴えわたる調略(直接武力で戦わず、敵を騙したり、味方に引き入れたりすること)と圧倒的武力の前に、なぜ、城主の自分の命と引き換えにしてでも有岡城にいる多くの者の命を救おうとしなかったのか。
このため、逃亡した村重は、戦国一の裏切り者、と称されてきました。
- でも、裏切りと言われているけれど、それは本当なのだろうか?(近年、毛利サイドの援軍を村重自ら直接交渉するために脱出したという見方もあります)。
- なぜ一度は信長サイドについていた村重が、反旗を翻したのだろうか。
- そしてその後の村重はどうなったのだろうか。
こんなことがとても気になって
黒部亨著「荒木村重 命惜しゅうて候」PHP文庫
を読んでみました。
黒部亨(くろべ とおる)さんとはこんな方です
(Wikipediaより一部抜粋)
鳥取県生まれ。鳥取師範学校卒業。元明石市教育委員長。
1965年「砂の関係」で群像新人文学賞受賞、芥川賞候補に挙がる。
主に史実に即した歴史小説を手掛ける。兵庫県と縁があり播磨国/兵庫県関連の小説やノンフィクションも多い。
感想
1.黒部さんの考察、これは深いと思った点
本書には、当時のいろいろな時代背景が描かれています。
かつての将軍からの村重さんへのお誘いとか。
信長と敵対する毛利方からの村重さんへのお誘いとか。
村重の正室の、多子(だし又は、たし)が、信長と敵対していた本願寺の出だとか。
茶の道をたしなむ村重のような教養人が大事にしていた「名物」といわれる茶道具を、信長が力に任せて献上させたり、そうなるように仕向けたりするさまだとか。
その中で、こんなシーンに目が釘付けになりました。
荒木村重が信長に謀叛を起こそうとするうわさを秀吉が聞きつけ、本当ならやめるように単独で村重のもとに乗り込んできたときの場面です。
「・・・おぬし、それほど、上さまがおそろしかったか?」
ぼそり、とささやいた。いちばん村重の柔軟な部分を同情と憐憫の掌でそっとつつみこむようないいかただった。
「・・・じつはな、摂州、わしもじゃよ」
「・・・」
ああ、秀吉も、村重も、(そしておそらくあの光秀も)みな腹の底では信長がおそろしかったのか。
残虐で信じられないような命令を出されたり、休む間もない戦に疲れ果てていても、
- それでも走り続ける道を選ばざるをえない者。
- 「義」を感じられずに途中でついていけなくなる者。
- 反旗を翻す者。
「義」や「野望」より「おそろしさ」の方が人を動かしてしまうことがあるのかもしれない。
そしてもし、どうしても避けられない人に「おそろしさ」を感じて追い詰められた時、人はどう行動するのでしょう・・。
別のシーンで信長の性格の芯について「癇癪分裂症の病」という表現もあって、こういう人を、例えば自分の父親とか、上司といったいちばん身近で避けることが難しい目上の存在として置き換えてみたとしたら、わたしも
「おそろしい」
という言葉しかやはり出てこないだろう、と思います。
村重、光秀、秀吉は、抱えていた事情も、義とするものも、欲望も、その後に選んだ方向もみな違うけれど、共通して根底にあったものが、信長に対する
「おそろしい」
という、どうしようもなく根の深い感情だったかもしれないというのは、一理ある、と思いました。
どんな理屈より感情は正直で、強いものです。
ここからは、少しネタバレも入るので、まっさらな状態でいたい方はどうぞお読みにならないでいてくださいね。
2 .村重は信長の死後、天下人の道を歩み始めた秀吉のもとで、道薫(どうくん)と称し、茶人として仕える
・・・衝撃的でした。
一時は信長陣営の中でライバルでもあった秀吉のもとで、茶人として仕えるというのは、どうなのでしょう。
普通に考えて屈辱的であったと思うのです。
剃髪した村重は、最初道糞(どうふん)と称するのです。
それを、それではあんまりだから、ということで秀吉が名を変えさせました。
そうしてまでも生きて、しかも覇者のもとに身を置く道を選んだ道薫。
強い意志を感じます。
ここでも小説の中に黒部さんの考察が語られています。
わたしにとってもこの頃の村重のありようが、有岡城脱出の謎とともに「荒木村重の最大の謎」として考え続けたい箇所となりました。
それにしてもトータス松本さん、演出の方と共に作り上げた、あっぱれな演技でした。
これからも荒木村重関連の作品を読むつもり満々でいますが、多分ずっとトータス松本さんの演じた関西弁のイメージのままの村重さんの姿は消えないんじゃないかと思います☆
本書目次
- 不意の客
- 夜のささやき
- 猪名野(いなの)燃ゆ
- お家騒動
- 摂津の虎
- 燎原の火
- 毛利の誘い
- 疑惑の雲
- 叛旗あがる
- 説得使往来
- 檻の中
- 城抜け
- 人質処刑
- 地の声
- 命惜しゅうて候
- 風、蕭々(しょうしょう)
- あとがき
記事をお読みくださり、ありがとうございます。 ビビりのためコメント表示は承認制となっています。 コメントいただいてから反映されるまで少々お時間を頂いていますが、ご理解くださいませ<m(__)m>