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池波正太郎さんの「鬼平犯科帳」を読み始めました。
文庫本で全24巻あります(番外編「乳房」を除く)。
だいたい1日1話のペースで寝る前にベッドで読み進めています。
大作なので先は長いのですが、一日の終わりの小さなご褒美としての特別な時間になっています。
読みながら、早く読み終わりたくもあり、いずれは迎えることになる最終話を迎えたくない気持ちもあり、なんだか複雑な気持ちで一杯です・・。
作品はテレビで何回も再放送していますし、広く知られたお話ですが、
本をじっくり自分のペースで読んでみると、所どころ様々な発見があります。
例えば、
「盗み」についても表現がいくつかあります。
少人数で実行するため、盗みの際に人を殺めることもあるような急ぎの盗みは「急ぎ盗(いそぎばたらき)」。
これに対し、狙った押し込み先に盗人仲間を人員としてあらかじめ滑り込ませておくような、数年に及ぶ計画に基づいて行う盗みを「お盗め(おつとめ)」。
こちらは財産の有り余るところから盗むこと、盗み先の人の血を流さないこと、女性を手ごめにしないというもの。
さらに、違う盗賊グループで、メンバーをその盗みの為だけに貸し借りしたりする「貸しばたらき」。
読み進めるうち、練られたしっくりくるネーミングだと感じますが、これらは皆池波さんの造語なのだそうです。
池波さんが実在の人物、火付盗賊改方(ひつけとうぞくあらためかた)長官 長谷川平蔵 宣以(のぶため)を知ってから、実際に小説を書き始めるまで約10年の歳月がかかったようです。
それは、ご自分の文体がまだ硬かったから。
硬い文章では江戸時代の世話物は書けないと思ったのだそうです。
「鬼平犯科帳」読者としては初心者ですが、読み進めるにつれ、池波ファンとしての思いがつのり、以前から興味のあった池波正太郎記念文庫に行ってきました。
池波正太郎記念文庫
東京都台東区西浅草の台東区立中央図書館の中にあります。
入場無料。
池波家から寄贈された自筆原稿や愛用品など、約25,000点に及ぶ資料の寄贈を受けて平成13年に開設されました。
なお、館内は写真撮影禁止です。
いろんな行き方があると思いますが、わたしはつくばエクスプレスで浅草まで行って、そこから約10分位ぶらぶら歩いて行ってみました。
池波正太郎記念文庫を入ってすぐのところに、池波さんの年譜がパネルになっています。
その年譜の脇に氏の言葉が大きくパネルになっていました。
「東京人に故郷はない、と、東京人自身が口にするけれども、私はそうでない。私の故郷は誰がなんといっても浅草と上野なのである」(男のリズム「散歩」より)
作品やエッセイにもたびたびこれらの地が登場してくるのは、こういう強い思いがあったからなのかと納得しました。
館内には書斎の一部が復元されています。ガラス越しですが一番じっくりとみた場所です。
実は夢中になって近くで見ようと、ガラスにおでこをぶつけてしまいました・・。
恥ずかしい・・。
さて、やはりファンとしては持ち物は気になるところ。
机の上に置いてある
愛用の、手にしっくりと馴染んだであろう万年筆、
赤と青の使い倒して短くなった色鉛筆、
使い込んで角がやや丸くなった落款、
挿絵もご自身でも描かれることもあったので、その絵筆やパレット類。
愛用品は椅子に座った時に、ちょうど手に取りやすいところに配置されています。
(ウイスキーの小瓶とかもあったような・・)。
机の近くにある本棚の中の、大量の資料も大いに気になりました。
ただガラス越しだったので、残念ながら光の反射のため本の題名がみえにくかった事情もありました。
それでも、
大江戸切絵図
江戸風俗史
江戸飲食店台帳
寛政重修諸家譜
姓氏家系大辞典
など、かろうじてメモ出来ました。
原稿に書かれていた池波さんの字は、
たくさんの字を書き慣れた方に特有の
「こなれた字」だなあと思いました。
原稿には読み方が難しい漢字や、
池波さんオリジナルの、例えばお盗め(おつとめ)のようにあえてそう読ませたい場合には、
ちゃんと「ふりがな」が振ってありました。
校正の方や読者といった読み手の方のことを大事に考えて下さっているためでしょう。
感心したのは、氏の手書きの年賀状を展示してあるコーナー。
その年の干支の絵を氏がみずから描きデザインします。
ネズミ年のときのネズミは、ねずみ小僧で千両箱を背中にしょっていたり、
イヌ年のときのイヌはブルドックで葉巻をくわえています。
それをもとにして、使用する年の前年の春までには年賀状の裏面は刷り上げてあったのだそうです。
あとは少しずつ宛先のご住所やお名前を手書きしていかれたのだとか。
なにせ投函数は約千枚ほどになるので、せめて表書きだけでも手書きで、と思われたということですが、なかなか出来ないことだと思います。
人とのご縁を大事に思う氏の心がけ。
また、作品を、締め切りに遅れることなく仕上げていった秘訣のようなものを感じました。
それから自作の原画は、なんといっても配色が素晴らしいです。
特にフランスのパリの街並みのスケッチなどは、見るとこちらの心に花が咲くようです。
完全に独学なんでしょうか・・。
下の写真は「池波正太郎記念文庫 パンフレット」からのものです。
購入してきたもの
散々迷って、古地図と池波正太郎記念文庫の図録を購入してきました。
池波正太郎記念文庫についてはこちらです。
↓
池波正太郎 生誕100年 まちあるきマップ
昨年2023年は生誕100年だったそうです。
そのことの一環でもあったためでしょうか、
館内に「池波正太郎 まちあるきマップ」というパンフレットあり、いただいてきました。
なおこちらはネットでもご覧になれます。
もしこちらにお越しになるときにでもお供できたら幸いです。
眺めているだけでも楽しいですよ。
こちらです。
↓
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