パンデミックが起きるずっとずっと前の頃のお話です。
当時私はスポーツクラブに入っていました。
スポーツクラブといっても高級なスポーツクラブではなく割と庶民的で家庭的な感じのところでした。
きっかけは、私が事務仕事をしているために夕方になると身体がカチコチに固まっていたので、そんな状態を少しでも解消したかったからです。
職場から家に帰る途中に立ち寄れる場所にあるそのスポーツクラブで、しっかり身体を動かしてから帰宅するようにしていました。当時は週に3回は通っていたと思います。
何をしていたかといいますと、水泳です。全身の運動になりますし、頭が空っぽになって気分転換になりました。そして身体が程よい感じに疲れてくれて、夜はよく眠れていました。
そのプールで何故かよくお会いする1人のおじいさんがいました。
おじいさん、といってもトライアスロンとかにも参加出来そうな位の筋肉の持ち主です。
お名前も存じ上げないのですが、結構な確率でお会いしていました。
私は最初はクロールで、時々平泳ぎを挟んでまたクロールに戻って黙々と競泳用コースを往復していました。
すると大体いつも1コース位間隔をあけてそのおじいさんも同じように黙々と泳いでいます。
お伝えするのが遅くなりましたが、実はそのプールのコースの距離はなんと17メートルしかありませんでした。
駅からすごく近いところに作ったスポーツクラブだったという立地の為なのか、建築予算の都合か、理由はわからないのですが、とにかく17メートルです!
中学の時の学校のプールが25メートルプールだったのですが、この25メートルと17メートルの差は想像以上に大きかったです。
プールの端から上手に蹴伸びが出来た場合、ヘタをすると3~4回くらい手足で水を掻くと反対側の壁に着いてしまう感じなのです。
(「蹴伸び(けのび)」って「三点倒立」と同じくらい懐かしい言葉ですね。普段はあんまり使わない言葉ですもの)。
それゆえ、まとまった距離を泳ごうとすると必然的に「猛烈に往復」しないといけません。
私もおじいさんもどうしてなのか毎回競い合うように往復して泳いでいましたが、毎回「いま何往復目なのか」がわからなくなっていました。
きっと私だけでなく、おじいさんも同じだったと私はみています☆
そして、おじいさんは私より必ず1往復多く泳ぎ切ってプールから上がっていくのでした。
一言もお話したことはなかったのですが、どうしてだか競い合っていたこのおじいさんのことを、この頃たまに想い出してはお元気でいらしていてほしいなあ、と思っています。