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車浮代著「蔦重の教え」  蔦重にわたしも叱ってもらった感じで、なんだか嬉しいのです

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2025年の大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺(つたじゅうえいがのゆめばなし)」を毎週みています。

 

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吉原という悪所(あくしょ)に生まれた蔦重(つたじゅう)こと蔦屋重三郎(つたや じゅうざぶろう)。

困難に出合っても、いやむしろ困難しかやってこない状況なのに、

自分の持てるありったけの「知恵」を絞り、

また人との不思議な「ご縁」に助けてもらいながら、

たくましく自らがめざす夢に向かって道を切り開いていきます。

蔦重の(よい意味での)したたかさや、人をひきつけてやまない魅力に、毎回目が離せません。

 

丁度そんな折、ホントに不思議なのですけれど、たまたまこの本を目にして、すぐに読み始めました。

 

車浮代(くるま うきよ)著

「蔦重の教え」

です。

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あらすじ(双葉文庫より)

55歳、仕事で大ポカをして依願退職を強要された人生崖っぷちの広告代理店営業マン、武村竹男(タケ)は、お稲荷さんの怒りを買い、1780年代の吉原にタイムスリップしてしまった!

しかも(※気を失った)自分を揺さぶり起こしたのは吉原のガイドブックで当てている出版界の風雲児、蔦屋重三郎(蔦重)だった!

なぜか20代の体に戻ったタケは蔦重のもとで働くことに。

そこには後に世界で知られる浮世絵師、喜多川歌麿の若き姿があり、タケは葛飾北斎とも交流し、蔦重に叱咤されながら、ものづくり、商売、ひいては人生の極意を学んでいく。

タケはこのまま江戸の住人となるのか!?

ユーモア満点の実用エンターテインメント小説!

※ 補足させていただきました

感想

1.タイムトラベルもの、お好きですか?

わたしは以前NHKで放送していた「タイムスクープハンター」とか、映画「バックトゥザフューチャー」とかの「タイムスリップもの」が大好きです。

 

出来ることなら、わたしも過去のあらゆる時代にタイムスリップして、歴史上の著名人にも、市井のひとにも、何より、うちのご先祖様にもお話を聞けたらいいのになあ、と思うくらいです。

 

さて、本書はタイトルが「蔦重の教え」とあるので、少し硬い感じがしますが、お話は完全にタイムスリップものの「エンターテインメント」です。

 

まず、本書のストーリーテラー、武村竹男(タケさん)が、はからずも江戸時代にタイムスリップしてしまった時の「いでたち」が、実年齢55歳が20代に「若返って」いて、そして何故か「坊主頭に」なっている・・。

これってどう考えても「頭を丸めて出直せ」ってことじゃないですか?( ;∀;)

 

でも一方では、お話の中に蔦重の「ビジネス論」や「人生訓」が、チョイチョイちりばめられています。

また、蔦重が生きていたころの江戸庶民の「暮らし」(生活編)についても知ることが出来るので、いろんな要素がキュッと詰まっている「あっぱれ」な作品でした。

 

2.蔦重の教え「ビジネス論」 「人生訓」わたしのベストレセクション

たくさんあったので、選ぶのに迷ってしまいました。

 

蔦重や江戸時代のことを深く学ばれ、そこにさらに車さんの信条もおそらくプラスされたものが、わたしの頭にも心にもしっかりと届きました。

ちょっと長いですが、本書より一部引用します。

①(双六でいう)「あがり」を定めて人生を逆算し、梯子をかける

「てっぺんに行くためにはいつまでに何をしなきゃなんねえかってことを『あがり』から逆に考えてって、支柱(補足 梯子の二本の支柱のこと)に踏み子(補足 梯子の足をかける桟(さん)のこと)をかけるんだ」

「あとはほら、よそ見せずにまっつぐ上を見て、下から順に梯子を上っていきゃあ、必ず『あがり』に辿り着くって寸法だ」

「難しけりゃあ、梯子を長くするなり、『あがり』を小さくすりゃあいいじゃねえか。・・いいか、この踏み子の一本一本の期日を決めて、約束ごとにするんだよ」

「お陰様」と「今日様」

江戸の人々は、しばしば「今日様(こんにちさま)」という言葉を使う。

朝起きるとまず、お天道様に向かって「今日様、今日もよろしくお願いします」と拝み、「生きていられるのは今日様のおかげだよ」と諭し、寝起きの悪い小僧には、「今日様に申し訳ないよ」と小言を言う。

また、「おかげさま」という言葉も、現代では「ありがとう」につける接頭語か枕詞のように無意識に使われているが、この時代はもっとずっと深い意味を持つ。

「おかげさま」は漢字で書くと、「お陰様」となる。「お前はお陰様に生かされているんだよ」と母は子に教え、何かいいことがあると「お陰様に感謝しなさい」と言われる。

(一部省略)

「お陰様」に感謝するということは、目の前にいる人だけでなく、その人を形成した親や先祖、八百万の神々に感謝するということで、「今日様」に感謝するということは、この瞬間から始まる未来に感謝するということだ。

3.江戸の生活編

①長年の謎

わたしは時代小説が好きでよく読みます。

銭湯(よく「湯屋(ゆや・ゆうや)といいます)のシーンでは、身体を洗う洗い場から湯船のある場所に行く手前に、かなり低めの鳥居のような門をくぐって出入りしている場面が描かれています。

その門のことを「石榴口(ざくろぐち)」というのですが、これは熱気が外に逃げないようにするために作ってあるのだそうです。

でも、なんで「石榴口(ざくろぐち)」というのかが、ずっとわかりませんでした。

 

で、本書を読んでようやく腑に落ちました。

これ「洒落」なんですね。

当時は、鏡を磨くのに石榴の汁で磨いたので、「鏡(に)要る(いる)」。

そして湯船と洗い場の間を「屈み入る(かがみいる)」。

・・とってもすっきりしました(*^-^*)

②変体仮名

昔、ペン習字を習っていました。

級や段もあって、学んでいくうちに「変体仮名(へんたいがな)」というのも習いました。

 

「仮名(かな)」はざっくりいいますと「漢字(「真名」 (まな)をどんどん崩していって、それがやがて「仮名」になったのです。

たとえばこんな感じです。

「以」→「い」

「仁」→「に」

 

「仮名」のうち、一部は今でも「平仮名」としてわたしたちも使っていますが、その他は「変体仮名」と呼ばれ、こちらは老舗の和食や蕎麦屋の看板、和歌などを書くときなど、その使用は限られるようになりました。

 

ただ難しいのは、たとえば「i」という音を表記するのに、どの「漢字」を崩したのかによって、それに対応した「変体仮名」もみんな違うということです。

 

(上が変体仮名 下が元の漢字です)

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(吉川弘文館 「歴史手帳」 歴史百科 資料編より)

では、なぜこんなにバリエーションがあるのか、という理由は、

当時の方は

「一文節に同音が入った場合、同じ文字は使いたくない」と思ったからなのだそうです(そんなところにこだわらなくても( ;∀;))。

本書の説明ですと、

「いいだこ」を変体仮名で書くと、「以伊多古」という漢字を崩した文字が使われる。それも、どの文字を使うかは個人のセンスなので、人によっては、「伊以多古」と書いたり、「以々多古」と書く人もいる。

漢字の意味は関係なくて、あくまで「音」なんですね。

 

ペン習字を習っていたときは、変体仮名を読もうとすると、ある程度しっかり元の漢字を覚えていないと読めないので、ほぼ苦行に近かったです。

 

本書ではこうあります。

元の漢字の意味を無視した表音文字は、なんのことはない、昔の暴走族の定番フレーズ「夜露死苦」(よろしく)と考え方は同じで、それを一筆書きにしただけのことである。

どの変体仮名の説明よりも、抜群にわかりやすかったです(*_*;

4.結論

いろいろ書きましたが、最後にひとこと、どうしても言わせてください。

どなたか本書を映画化してくれませんか~?

 

車浮代(くるま うきよ)さんはこんな方です(本書より一部抜粋)

時代小説家、江戸料理・文化研究家。

セイコーエプソンのグラフィックデザイナーを経て、故・新藤兼人監督に師事しシナリオを学ぶ。

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